幻のシャンパン「サロン」とは?魅力や特徴、おいしい飲み方を解説!
著名人にもファンが多いほど味わいに優れるものの、市場流通量が少なく希少性が高いことから“幻のシャンパン”と呼ばれています。
本記事では、幻のシャンパン「サロン」とは何か、魅力や特徴、市場価格、おいしい飲み方を解説します。
幻のシャンパン「サロン」とは
サロンとは、世界的に有名なシャンパーニュメゾン(生産者・シャンパンブランド)の一つです。世の中には数多くのシャンパンがあるものの、サロンは良質なブドウが生産できた年にしか製造されず、さらに最低8年以上も長期瓶内熟成させるなど、並々ならぬこだわりがあります。良質なブドウができた年にしか生産しないため、場合によっては何年もの間、次のシャンパンが作られないこともあります。世界の美食家や著名人を虜にする品質の高さからこぞって買い求められ、入手困難になることから、いつしか“幻のシャンパン”と呼ばれるようになりました。
なお日本国内では、2007年からJALの国際線ファーストクラスでサロンを提供しています。機内提供をしているのは世界の航空会社の中でもJALのみで、客室乗務員の知識とサービスを認められたことから提供に至ったそうです。
サロンの歴史
これだけ人気のあるサロンですが、実は創業は1920年とその歴史は100年ほどです。さらに、サロンの産みの親であるウジェーヌ・エメ・サロン氏の趣味が高じ、自身で購入した畑でシャンパンを作り始めるなど、他のメゾンと異なる型破りな創業の歴史にも面白さがあります。1920年、毛皮商で成功したウジェーヌ・エメ・サロン氏はシャンパン好きが高じて、義理の兄のつてを使いシャンパン作りをスタートします。このとき、シャンパン作りの地に選ばれたのが、シャンパーニュ地方のメニル・シュル・オジェ村でした。
当初、メニルでは5ヘクタール、ちょうど東京ドーム1個分程度の小規模な畑を購入し、そこで作られた上質なシャルドネのみを使ってシャンパンを作り始めます。
これが瞬く間に評判となり、貴族の社交場だった一流レストラン「マキシム」のハウス・シャンパーニュに抜擢されます。その後は、世界中の著名人や美食家に愛されるシャンパンとして、一躍有名になりました。
なお、1988年には世界有数のシャンパンメゾン、ローラン・ペリエの傘下となります。しかし、妥協を許さない製法は傘下に入った後も変わることはなく、現在でも幻のシャンパンとして世界中のファンを魅了し続けています。
生産のこだわり
では、実際にどのような点にこだわり生産しているのか、詳しく解説します。生産のこだわりをまとめると以下のとおりです。- グランクリュ(特級畑)のシャルドネのみ使用
- 単一ヴィンテージ(収穫年)のシャルドネしか使わない
- 良質なシャルドネが出来上がったときにしか生産しない
- シャンパン作りに機械は使用せず全て手作業する
- 生産したシャンパンは8年以上長期瓶内熟成する
単一ヴィンテージの良質なシャルドネのみを使用
通常のシャンパンは、複数の収穫年のブドウや品種をブレンドして作ります。これは、ブドウ自体に味の個性があり、ブレンドにより味を調整する目的があるためです。一方でサロンのシャンパンは、特級畑のメニル・シュル・オジェで獲れたその年のシャルドネしか使いません。
ブドウをブレンドしないことで、シャルドネ本来の味わいや個性を完全に活かすことができます。良質なシャルドネしか使わないため、100年以上の歴史があるサロンでありながら、実際にシャンパンが作られたのは37回程度とされています。
最低でも8年以上の長期瓶内熟成により風味を引き立たせる
全て手作業で作成したサロンのシャンパンは、その後、瓶に詰めたまま最低でも8年以上、長ければ9~11年程度熟成させてから市場に出されます。乳酸菌などを加えるマロラクティック発酵は行わず、自然な熟成のみで酸味とのバランスを整えるため市場に出回るまでに時間がかかり、年間生産本数は平均で6~8万本程度とされています。
サロンの味わいや魅力、特徴
サロンの味わいは芸術品とも例えられます。ここでは、サロンで扱うシャンパンの種類やブドウの特徴、サロンのシャンパンそのものの味や魅力を紹介します。シャルドネのヴィンテージシャンパン1種類のみ販売
サロンで販売しているのは、シャルドネ100%のヴィンテージシャンパン(ブラン・ド・ブラン)1種類のみです。メゾンによっては他の種類のシャンパンを販売していたり、ネゴシアン(ワイン製造会社)のようにワインやシャンパンも作っていたりすることもありますが、サロンはブラン・ド・ブランのみです。そのため、サロンが気に入って他のシャンパンも飲んでみたいと思ったら、ヴィンテージの違うものを選ぶこととなります。
サロンの原料シャルドネは作り手の個性を反映する
シャンパンの味は、原料のブドウによっても大きな差がでます。サロンに使われるシャルドネ種は、環境への適応性が高くフランス以外にもアメリカやチリ、オーストラリアなどのさまざまな国で栽培されています。ブドウ自体に目立つ個性や風味がなく、栽培する土地や作り手の個性を直接表現できる点も大きな魅力です。
サロンのシャルドネは、シャルドネの聖地とも呼ばれるシャンパンに適した環境で栽培されています。そのため、出来上がったシャルドネもみずみずしくて強い酸味があり、ミネラル分を豊富に感じられます。
“芸術品”と呼ばれる味わい
このように、絶好の環境でできたシャルドネを使い、メゾンの技と個性を活かして作ったサロンのシャンパンは芸術品と表現されることが多くあります。くるみやはちみつ、ヘーゼルナッツなどと表現される豊かな香りと、熟成により生まれる滑らかな口当たりが特徴です。その中にブドウ本来の味が凝縮され、メニル・シュル・オジェらしいミネラル分も感じられます。
サロンのシャンパンの味わいは、すっきりよりもふくよかに近いとされ、エレガントでみずみずしく、繊細でありながら力強さも感じさせるといわれています。
ヴィンテージによる差も魅力
なお、サロンの味や香りはヴィンテージによっても違いがあります。ブドウはその年の気象条件次第で味わいが異なるため、シャルドネのみを原料としたサロンは、ブドウの味が直接反映されます。中には、当たり年と呼ばれるものも存在し、ヴィンテージによる違いを楽しめる点もサロンの魅力の一つです。
サロンの当たり年
サロンは、良質なシャルドネが出来上がった年にしか製造されません。そのため、現在販売されている全てのサロンが高品質であることに間違いはありません。しかし、世間ではその中でも特に品質に優れる“当たり年”があるとされ、該当するヴィンテージのシャルドネはプレミア価格がつくこともあります。
ここでは、これまでに販売されたサロンのヴィンテージと、その中でも特に高品質な当たり年をいくつか紹介します。
これまでに販売されたサロンのヴィンテージ一覧
これまでに販売されたサロンのヴィンテージは以下のとおりです。- 1921、1925、1928、1934、1937、1942、1943、1946、1947、1948、1949、1951、1953、1955、1956、1959、1961、1964、1966、1969、1971、1973、1976、1979、1982、1983、1985、1988、1990、1995、1996、1997、1999、2002、2004、2006、2007、2008、2012
ここでは、以下の当たり年とされる5つのサロンを紹介します。
- 1988
- 1990
- 1996
- 2002
- 2004
サロン 1988
1988年はシャンパーニュ地方でブドウが豊作だったことからサロンの品質も高く、リンゴやレモン、バターを連想させる豊かな香りとミネラル分のある力強い味わいが楽しめます。なお、品質と保存状態のよいシャンパンやワインには賞味期限がなく、長い年月をかけて熟成されたものは古酒としての付加価値がつきます。1988年のサロンは、熟成から30年以上経過し、まさに今が飲み頃でしょう。
サロン 1990
1990年もヨーロッパ全土で好天に恵まれたことから、サロンも良質なものが完成しました。ワイン評価雑誌も軒並み90点以上をつけた傑作で、完熟した蜜リンゴやブリオッシュを思わせる濃厚な香りながら、味わいは青リンゴやライムのようなみずみずしい酸味が感じられます。サロン 1996
サロン1996は、最高のヴィンテージの呼び声が高いサロンの一つです。白桃のような香り、酸味と果実らしさのバランスが取れた力強い味わいは、このままでも十分な傑作であることは間違いありません。熟成から30年を経過していないため、今後ますます味わいが高まるであろうポテンシャルの高さにも注目です。
サロン 2002
21世紀最初のヴィンテージは、12年の熟成を経て2014年に日本国内でも販売を開始しました。なお、国内では当初、JAL国際線ファーストクラスでしか提供されていませんでした。太陽をたっぷりと浴びたブドウの豊潤さが感じられ、アカシアの花やレモンを感じさせる香りと、若々しくも奥深い味わいが特徴です。
サロン 2004
サロン・ドゥラモットの社長 ディディエ・ドゥポン氏は、親日家としても有名です。中でもサロン2004は当初、JAL国際線ファーストクラスのみで振る舞われ、さらに最初にお披露目されたのも東京ということもあり、日本にゆかりの深い1本となっています。サロン2004は、1990年と同様にブドウが豊作であったため、果実のみずみずしさだけでなくミネラル感をしっかりと感じられます。
サロンの定価と市場価格
サロンのシャンパンは需要が圧倒的に大きいものの、生産本数・市場流通本数ともにごくわずかです。希少性の高さから市場価格も跳ね上がり、中でも当たり年のサロンはプレミア価格で取引されることもあります。サロンの定価
サロンは輸入品のシャンパンのため、日本国内ではメーカーの定めた定価は特にありません。それぞれの仕入先(酒販店)で希望小売価格を設定していることが多く、店舗によっても価格が異なります。サロンの市場価格
サロンの市場価格はヴィンテージにより異なるものの、1本(750ml入り)あたり20万円前後となります。さらに、1950年~1960年のものや当たり年のサロンは、1本あたり100万円などの高値がつけられることもあります。サロンは実際に自分で飲むだけでなく、販売後に購入し眠らせておくコレクターが多いことからも、市場価格が高騰しがちです。
なお、サロンは買取市場でも価格が高騰傾向にあります。過去と比べて買取価格が334%上昇したケースもあるため、家に眠っているサロンがあるなら、査定に出してみるのもおすすめです。
サロンのおいしい飲み方・割り方
幻のシャンパン サロンが手に入ったら、ぜひ、おいしさをとことん引き出せる方法で飲んでみましょう。ここでは、おいしい飲み方やサロンに合う料理やおつまみを解説します。
おいしい飲み方
サロンのおいしい飲み方のポイントは以下のとおりです。- ワイングラスに注ぐ
- 温度は10℃前後にする
- 開封後は早めに飲み切る
- 未開封なら熟成もあり
ワイングラスに注ぐ
サロンの香りやミネラルを含んだ味わいを存分に堪能するためにも、シャンパングラスではなくワイングラスに注ぐのがおすすめです。ワイングラスであればボウル部分があって香りが立ち、口に運べる量も少量ずつとなるため、繊細な味わいを感じやすくなります。温度は10℃前後にする
サロンのように熟成されたシャンパンは、冷やしすぎず10℃前後にして飲むのが最適です。理由として、冷やしすぎると酸味は増すものの、サロンの持ち味である複雑な風味を感じづらくなることが挙げられます。冷蔵庫で2~3時間程度冷やすと、ちょうど飲み頃の8℃程度になります。
開封後は早めに飲み切る
サロンはシャンパンのため開封後は炭酸が抜けてしまい、時間が経つと本来の味わいが損なわれていきます。そのため、開けたら当日中には飲み切ってしまうのがおすすめです。未開封なら熟成もあり
未開封のシャンパンに賞味期限はありません。そのため、ワインセラーのように適した状態で保存できる場所があれば、自家熟成も可能です。特に、サロンは30年熟成させて飲み頃ともてわれるため、若いサロンがあるなら少し寝かせておいてもよいでしょう。
サロンの割り方
大前提としてシャンパンはそのまま飲むことが多く、サロンのような上質なシャンパンであれば、なおさらストレートで飲むのがおすすめです。とはいえ、アルコールに弱い人の中には、飲んでみたいけどストレートではきつく感じる人もいるでしょう。その場合、以下の飲み物と割って飲むのもおすすめです。また、他のお酒と割ればカクテルとして飲むこともできます。
ネクター
ネクターのように濃厚な甘みのあるジュースとシャンパンを割れば、アルコール度数を抑えられるだけでなく、甘く飲みやすくなるためおすすめです。特に、ピーチネクターなら相性がよくなります。オレンジジュース
シャンパンとオレンジジュースを1:1で割ったカクテルをミモザといいます。代表的なカクテルとして知られているため、こちらもおすすめです。オレンジは絞りたてのものが用意できればよりリッチな味わいになるので、パーティーなどにも最適でしょう。カシスリキュール
カシスオレンジを作るときに使うカシスリキュールがあるなら、甘みの強いカクテルキール・ロワイヤルができます。作り方は、シャンパン4/5とカシスリキュール1/5を合わせるだけです。シャンパンの味を少し変えたいときにもよいでしょう。サロンに合う料理・おつまみ
シャンパン(白)は、魚介系の料理やおつまみと好相性です。特に、サロンのように風味や存在感が強いシャンパンは、料理自体もシンプルに素材の旨味を活かしたものがよいでしょう。例えば、以下などがおすすめです。
- 牡蠣のバターソテー
- 魚介類のソテー
- トリュフ料理
- 松茸を使った料理
- 寿司
- 天ぷら
- おせち
年代もののサロンがあるなら査定に出すのもおすすめ
サロンは良質な白ブドウが作られた年にしか生産されず、さらにそこから8~11年程度寝かせた後にしか市場に出回りません。美食家も虜にする味わいはもちろん、その希少性から幻のシャンパンと呼ばれています。なお、サロンはヴィンテージにより当たり年があるほか、寝かせることで味わいが増す点も特徴です。現在は買取価格も高騰中のため、自宅に年代物のサロンがあるなら査定に出してみてもよいでしょう。