「カルヴァドス」とは?リンゴで造られたブランデーの選び方と飲み方を紹介!
カルヴァドスとは?
カルヴァドスは他のお酒に比べて日本ではあまり馴染みがなく、どのようなお酒なのかよく知らない方も多いのではないでしょうか?ここではカルヴァドスについて、詳しく見ていきましょう。リンゴで造られたブランデー
カルヴァドスはリンゴを原料とするお酒で、ブランデーと同じ製法で造られる蒸留酒です。アルコール度数が40度以上と高く、日本ではお酒としてそのまま飲むよりも、カクテルのベースとしてやアップルパイなどのお菓子作りに使われるお酒と認識している方が多いかもしれません。 カルヴァドスの歴史は古く、1553年の古文書にはリンゴの蒸溜酒が造られていたという記録が残されています。19世紀、ヨーロッパを中心に世界中に広まったフィロキセラという害虫でブドウが壊滅的な被害を受けたとき、リンゴで造るカルヴァドスが脚光を浴びました。このときワインに代わるお酒として、その名が世界中に知られるようになったのです。フランス・ノルマンディー地方のみが名乗れる
リンゴが原料であればどれもカルヴァドスというわけではなく、フランスの北西部にあるノルマンディー地方で造られたお酒だけがカルヴァドスを名乗ることができます。 ノルマンディー地方は世界遺産であるモン・サン・ミッシェルがあることでも有名な土地。カルヴァドスはそこで収穫される名産品のリンゴを使って造られます。 ノルマンディーで栽培されたリンゴだけを使い、その中でも48種類のみと限定されているのが特徴。また、カルヴァドスには1割~3割程度までなら洋ナシをブレンドすることが可能です。洋ナシを合わせることで、酸味と甘みのバランスが取れた一味違うカルヴァドスができあがります。銘柄によってブレンドの配分は異なるので、その違いを楽しむこともできるのが魅力です。 リンゴを使ったお酒にはシードルもありますが、シードルとはリンゴを発酵させて造った発泡酒のことです。カルヴァドスはこのシードルを蒸留し、最低2年間樽で熟成して造られます。年月を重ねるほど香り豊かでまろやかな味わいに。 6年以上の熟成を経たものは「オル・ダージュ」や「ナポレオン」と呼ばれ、高級酒として価格も高くなります。カルヴァドスの産地
カルヴァドスと一口に言っても産地や熟成期間などでさまざまな種類があります。ここでは、カルヴァドスの産地についてみていきましょう。
カルヴァドスはワインなどと同じように、AOC(原産地の呼称を守る法的規制)の対象になり、産地が3つに分かれています。それぞれ個性が違うので産地ごとの特徴を覚え、選ぶときはどの産地のものかをチェックするといいでしょう。
カルヴァドス ペイ・ドージュ
ノルマンディー地方の中央から北東にあるペイ・ドージュ地区で造られるカルヴァドスがカルヴァドス ペイ・ドージュです。カルヴァドスの製法では、リンゴ以外で洋ナシを混合するときは割合を30%以下にする、オーク樽による熟成期間は2年以上にするという条件があり、コニャックと同じく単式蒸留器で2回蒸留して造ることが義務付けられています。 ペイ・ドージュ地区はリンゴの栽培に適した気候です。ここで生産されたカルヴァドスは高級品と位置付けられています。リンゴを多く使用しているのも特徴のひとつで、極上の味わいを堪能できるカルヴァドスです。カルヴァドス ドンフロンテ
ノルマンディー地方の中央南側にあるドンフロンテという小さな地区で生産されるカルヴァドスがカルヴァドス ドンフロンテです。面積が小さいエリアのため、カルヴァドスの生産量も少なく、全体の約1%程度になります。 ドンフロンテ地区はリンゴと並んで洋ナシが多く生産される地域で、原料にはポアレと呼ばれる洋ナシのワインを30%以上使用。製造には3年以上オーク樽で熟成させるという条件があり、アルマニャックと同じ半連続式で蒸留されています。この地区ならではの個性的な味わいが人気です。カルヴァドスAC
カルヴァドスACは上記2つの地域以外のノルマンディー地方全域で造られるカルヴァドスです。特に蒸留法に規定はなく、最低アルコール度数は40度。最低2年間樽で熟成させるという規制があるだけで、異なる地域のシードルやポアレを混ぜて造ることも許されています。 3つの生産地の中では一番規制がゆるく、価格も手頃なものが多いのが特徴。自由度が高いだけに、他の2つの地域と比べて伝統に縛られない新しい味わいを楽しむことができます。初めてカルヴァドスを飲むという方にもおすすめです。カルヴァドスの製法
次にカルヴァドスの製法についてです。カルヴァドスはアップルワイン(シードル)を蒸溜してつくられます。「カルヴァドス」としてAOC(原産地呼称保護)として認定されているため原料に使用できるリンゴや梨なども限られており、アルコール度数は最低40度、熟成期間は最低2年以上が必要です。
またカルヴァドスは熟年年数が幅広いのが特徴。産地が同じでも、熟成年数によって味が大きく変わるものなのです。熟成年数は短いものから順にランク分けがされ、熟成年数の長いものほど高いランクとされています。ランクが高くなるにしたがって、価格も高くなる傾向です。 ・フィーヌ(最低2年) ・ヴィユー・レゼルヴ(最低3年) ・ヴィエイユ・レゼルヴ(最低4年) ・VSOP(最低4年) ・オル・タージュ(最低6年) ・ナポレオン(最低6年)
5年以内
5年以内と比較的熟成期間が短いカルヴァドスは、リンゴのフレッシュな香りが際立ち、アルコールを強く感じる味わいです。ストレートに飲んで味わうよりは、カクテルや料理の香り付け、お菓子作りに多く利用されています。6年以上
カルヴァドスは熟成期間が長いほどアルコールの角が取れて飲みやすくなります。口当たりがまろやかでコクのある味わいを堪能したい場合は、熟成年数6年以上のものを選ぶとよいでしょう。初心者におすすめのカルヴァドス2選
初めてカルヴァドスを飲む方におすすめの銘柄を2点ピックアップしました。どちらも手頃な価格でカルヴァドスの魅力を十分に味わえる、定番のカルヴァドスです。ブラー グランソラージュ
カルヴァドスの代名詞とも言われるのがブラー グランソラージュです。「グランソラージュ」とは最良のリンゴを生み出す偉大なる土壌という意味。産地はカルヴァドスペイ・ドージュで、熟成期間は2~5年と短めです。 リンゴ独特のアロマに、オーク樽のフレーバーがほのかに感じられるのが特徴。フレッシュなリンゴの香りと味わいを楽しめるカルヴァドスです。 希望小売価格は700mlで4,500円。ネット通販などでは半額で購入できる場合もあり、初めてカルヴァドスを試すのにはお手頃な価格。そのまま飲むだけでなく、紅茶に数滴入れて香りを堪能する、カクテルのベースにするなどいろいろな方法が楽しめます。 もう少し深みのある本格的なカルヴァドスが飲みたいという方には、同じブラー社が手がけるブラー XOがおすすめ。こちらは8〜40年熟成の原酒をブレンドしており、リンゴの芳醇な香りが楽しめます。さらにオーク樽由来のナッツのような香ばしさが加わり、長い余韻が味わえるのも魅力。700mlで9,200円と熟成期間の長いカルヴァドスの中では比較的手頃な価格で、初めての方にもぜひ試してもらいたい逸品です。シャトー・ド・ブルイユ フィーヌ カルヴァドス
シャトー・ド・ブルイユ フィーヌ カルヴァドスは、カルヴァドス・ペイドージュ地区の小規模ながら由緒あるシャトー・ド・ブルイユ社が昔ながらの伝統的な製法で作るカルヴァドスです。じっくりと時間をかけて蒸留した原酒を、選び抜いたオーク樽で熟成させた逸品で、リンゴのフルーティな味わいが楽しめます。 ペイドージュ地区のカルヴァドスらしい、豊かなボディで飲みごたえのあるカルヴァドスなので、ストレートで飲むのはもちろん、カクテルにもよく合います。本格的な味わいながらも700mlで4,600円と購入しやすい価格で、初めてのカルヴァドスとしておすすめの1本です。通におすすめのカルヴァドス2選
これまでにカルヴァドスは一通り飲んでいて、さらにこだわりの逸品を探しているという方に、おすすめの2本を紹介します。
カルヴァドス ドメーヌ フォルニエ27年
カルヴァドス ドメーヌ フォルニエ27年は長期熟成で希少価値の高いカルヴァドスです。作り手のフェルナンド・フォルニエはすでに引退し、跡を継いだ息子たちもカルヴァドスの生産はおこなっていません。そのため、今後このドメーヌからカルヴァドスが生産されることはなく、カルヴァドス ドメーヌ フォルニエの在庫は現在残されているものだけです。 原料は1986年収穫のリンゴで、原酒をオーク樽で27年間熟成させたあとは一切加水することなく瓶詰めしています。 こちらのカルヴァドスに限らず、20年を超える熟成のカルヴァドスは現在あまり市場では見かけません。たまに出回ってもかなり高額な場合もあります。相場に合う価格のものを見つけたら、迷わず購入したい逸品です。もし今お手元にある方は、高く売れる可能性があるでしょう。カルヴァドス・オー・ダージュ15年
カルヴァドス ドンフロンテ地区のルモルトン家が手がけるのがカルヴァドス・オー・ダージュ15年です。ドンフロンテ地区はカルヴァドスの生産量が全体の1%にも満たない銘醸地。そこで造られるカルヴァドスで、洋ナシが30%以上と贅沢にブレンドされています。 15年熟成の古酒をブレンドし、さらに熟成させているこだわりの逸品です。伝統的な連続式の柱型蒸留器で蒸留することで果実のフレッシュな風味が際立ち、旨味のあるカルヴァドスができあがります。蒸留されたカルヴァドスは使用済みの樽に入れ、この地区の規制通り最低3年以上熟成。使用済みの古樽を使用することで樽のタンニンが移らず、果実味を強く感じる仕上がりになります。 茶色がかった琥珀色が美しく、甘い芳醇な香りが魅力的です。軽やかな洋ナシのアロマに樽由来のバニラやスパイス、甘いキャラメルのような風味が絡み合った深みのある味わいが特徴で、余韻が長く続きます。 長い熟成で醸し出されたエレガントな風味が堪能できるとして高級レストランの御用達。パリをはじめとするフランス各地のレストランで楽しまれているハイクオリティなカルヴァドスです。カルヴァドスをアレンジした飲み方
カルヴァドスは食後酒として飲むのが一般的で、チーズなどと相性がいいお酒です。甘みがありウイスキーやブランデーよりは飲みやすいものの、アルコール度数が40度以上とかなり高め。アルコールが強いからと敬遠して、カルヴァドスの香りや味わいを楽しめないのはもったいないことです。アルコールが弱くてそのまま飲むのは難しいという方でも楽しめる方法を紹介します。紅茶に入れる
カルヴァドスは紅茶によく合い、ブランデーのように紅茶に数滴入れて香りを楽しむことができます。立ち上る湯気でリンゴの甘い香りが広がり、ただ紅茶を飲むよりも優雅な気分に。いつもよりリラックスしたいときや、ゆっくり時間が取れるときにおすすめの飲み方です。リンゴジュースと合わせる
カルヴァドスをリンゴジュースと合わせれば、アルコール分が薄まって飲みやすくなります。同じリンゴが原料なので混ぜても違和感がなく、甘みが加わるのも魅力。グラスにカルヴァドスを注ぎ、リンゴジュースを適量入れて軽くかき混ぜればできあがり。好みで氷を加えれば、より美味しくなるでしょう。 また、カルヴァドスは他にもお菓子作りにもおすすめです。アップルパイの生地に少量練りこむ、あるいはジャムの部分に少量加えると格段に美味しくなります。ドライフルーツにカルヴァドスを漬け込めば、大人のスイーツのできあがり。ぜひお試しください。カルヴァドスを使ったおすすめのカクテル
カルヴァドスはカクテルにもよく合うお酒です。ストレートやロックではアルコールが強すぎるという方も、カクテルなら美味しく飲めるのではないでしょうか。 特にカルヴァドスはリンゴや洋ナシの甘みが感じられるため、アレンジしやすいのが特徴。ここでは、簡単に作れるシンプルなカクテルから、バーで注文するような本格的なカクテルまでいくつかピックアップして紹介します。
シンプルなのに美味しいカクテル
ブラーバック
カルヴァドスをより爽やかに飲みたい方におすすめです。ジンジャーエールで割るだけのシンプルで飲みやすいカクテルで、リンゴの香りが炭酸とともに口の中に広がり、爽やかな味わいが楽しめます。 (作り方) 1.氷を入れたタンブラーにカルヴァドスを45ml注ぐ 2.ジンジャーエールを適量入れて軽くかき混ぜる 3.お好みでスライスしたレモンかライムを飾るブラートニック
本場フランスで、カルヴァドスで作るカクテルの定番といえばブラートニックです。トニックウォーターを混ぜるだけの簡単なカクテル。さっぱりとして飲みやすく、豊かなリンゴの香りが楽しめます。 (作り方) 1.氷を入れたタンブラーにカルヴァドスを45ml注ぐ 2.トニックウォーターを適量入れて軽くかき混ぜる 3.お好みでスライスしたレモンかライムを飾るアップルカー
ブランデーやコニャックで作る有名なカクテルのサイドカーを、カルヴァドスのベースに代えたもの。リンゴの爽やかな香りとコクが楽しめるショートカクテルです。 (作り方) 1. シェイカーにカルヴァドス30mlとホワイトキュラソー20ml、レモンジュース20mlを入れる 2. 軽くシェイクしてグラスに注ぐ ホワイトキュラソーも使うため、アルコール度数がやや高めになります。アルコールを控えて飲みやすくしたい場合は、レモンジュースを多めにするとよいでしょう。少し手を加えた本格派カクテル
ジャックローズ
ザクロのシロップ、グレナデンシロップを使ったピンク色が美しいショートカクテルです。甘酸っぱい味わいが特徴で、カルヴァドスの芳醇な香りが活かされています。 (作り方) 1.シェイカーにカルヴァドス36ml、ライムジュース12ml、グレナデンシロップ12mlを入れる 2. 軽くシェイクしてグラスに注ぐエンジェルフェイス
アプリコットブランデーとブレンドする、古くから人気のショートカクテルです。香りが良く飲みやすいカクテルですが、アルコール度数が高いお酒との組み合わせなので注意しましょう。 (作り方) 1.シェイカーにカルヴァドス30ml、ドライジン15ml、アプリコットブランデー15mlを入れる 2. 軽くシェイクしてグラスに注ぐまとめ
カルヴァドスは産地や熟成年数で味わいが変わる奥の深いお酒です。色々な銘柄を試して違いを感じてみてください。ストレートやロックで香りとコクを堪能するだけでなく、カクテルにしてさまざま味の変化を楽しむのもおすすめです。当記事を参考にカルヴァドスの魅力を存分に味わってみてください。