こんにちは。
今回の豆知識の更新は
『偉大な芸術家達が熱狂した禁断の酒』です。
約100年前、中毒症状が問題となり一部の国で製造販売が中止されていた伝説のリキュール、アブサン。
販売禁止後、その存在は小説の中や地下で『禁断の酒、魔酒、飲むマリファナ』といった表現で語り継がれていました。
しかし現在ではアブサンの販売も解禁され、似たお酒も数多く生まれています。
映画や小説、漫画にも出てくるこの魅力的なお酒の正体は一体どんなものなのかスポットを当ててみました。
目次
■アブサンってどんなお酒?
■偉大な芸術家とアブサン
■是非使って欲しい、由緒正しい飲み方アブサンスプーン
■アブサンってどんなお酒?
ニガヨモギを主体に各種ハーブを原料とし、鮮烈で複雑な芳香と深遠で特異な味わいを持つ緑色の
リキュール酒です。
アルコール度数は40度~90度と種類によりますが、一般に度数はかなり強くなっています。
元々はスイスの医師が、ニガヨモギを原料とした薬を応用し独自の処方を発案、その製法を1797年にアンリ・ルイ・ペルノーに売却し、ペルノーがアブサンを商品化したことから始まります。
当時フランスではワインより安価な酒として市場を独占し、
アペリティフ(食前酒)のシェア90パーセントを占めていました。
しかし安価でありアルコール度数が高いこともあり、多数の中毒者・犯罪者を出してしまったそうです。
そしてニガヨモギの香味成分である
ツヨンにより
幻覚、麻痺性、昏睡、痙攣等などの向精神作用が引き起こされるとされ、1898年にベルギー領コンゴで禁止されたのに始まり、20世紀初頭には
スイス・ドイツ・アメリカなどでアブサンの製造・流通・販売は禁止されました。
その後1981年、WHOのツヨンの使用基準の見直しを行い、一度禁止されていたアブサンの製造が復活します。
禁止国であったスイスでも2005年3月1日に正式に解禁され、日本にも各種アブサンが輸入されるようになりました。
別名をたくさんもつアブサンですが、その名前の由来も謎に包まれています。
主成分ニガヨモギの古くからの呼び名、アブサン草より名前がつけられたとされています。
ただニガヨモギの花言葉は
「不在」であり、英語の「absence(アブセンス)」は「不在」を意味し、フランス語でも「存在しない」という意味になるためここから名づけられてともいわれています。
また製造禁止になった時には
「まるで名づけられた時から運命が決まっていたようだ」と語られました。
■偉大な芸術家とアブサン
感性やインスピレーションを引き出す霊酒として、
ゴッホ、ゴーギャン、モネ、ロートレック、ピカソなどの芸術家に愛飲されました。
「グリーンの詩神、聖女のため息、妖精のささやき」とたたえられましたが、人によっては
破滅に導いていったお酒でもあります。
それが幻覚成分ツヨンのせいなのか、単なるアルコール中毒だったのかは定かではありません。ここではアブサンの虜になった芸術家達をご紹介していきます。
ゴッホはカフェで出されたアブサンを美しい色彩で描いています。
かなりの
アブサン中毒だったと知られており、自画像を描くのに邪魔だと感じた左耳を自ら切断したのはアブサンの飲み過ぎだったとの逸話が有名です。最後はフランスの精神病院に入院し、猟銃自殺をしたそうです。
日本の作家、
太宰治。後に入水自殺。太宰がアブサンを常飲していたという記録はありませんが、小説
『人間失格』の中に以下のような記述があります。
「飲み残した一杯のアブサン。自分は、その永遠に償い難いような喪失感を、こっそりそう形容していました。絵の話が出ると、自分の眼前に、その飲み残した一杯のアブサンがちらついて来て、ああ、あの絵をこのひとに見せてやりたい、そうして、自分の画才を信じさせたい、という焦燥にもだえるのでした」
その他、スペインの画家
パブロ・ピカソ。大英博物館にはピカソがデザインしたアブサンスプーンが展示されています。
フランスの画家エドガー・ドガ。アブサンの絵で最も有名な
「アブサンを飲む女」を描いた画家です。多くの人の不幸を生みつつも文芸・芸術に貢献したのですね。
■是非使って欲しい、由緒正しい飲み方アブサンスプーン
ロミオとジュリェットの時代から、禁じられればこそ求めてしまうのは人の性です。
なんとかアブサンの味わいや雰囲気を楽しもうとする欲望が生み出したのが
パスティスという
アニス系リキュールです。
それらのアブサン系のお酒も含め、アブサンを本当に好きになって欲しいので、アブサンの美味しい飲み方をご紹介します。
基本的にはストレートやロックで飲む方が多いですが、
アブサンスプーンと呼ばれる専用器具を使った由緒正しい飲み方があります。
まずは小降りの背の低いグラスに氷を入れます(アブサングラスが最適)。
そして、グラスの上にアブサンスプーンを置きその上に角砂糖(カソナードがより良い)を乗せます。
アブサンを角砂糖の上に垂らすように注ぎ、角砂糖に火を付けます。
砂糖が泡立ってくるか燃え尽きるまで待ちます。
そして砂糖の上からに水を注ぎ火を消します。
アブサンスプーンの上の角砂糖をグラスに落としかき混ぜて出来上がりです。
初めて飲む方のほとんどはその独特な味わいと強烈な酒精により
「生涯忘れがたい経験」をします。
不思議と2~3日後にもう一度飲んでみたくなる、アブサンは、そんな不思議なお酒です。
まとめ
世間の趣向は様変わりが激しく、極一部のマニアのみが歓喜喝采しただけで多くの人達はその存在すら忘れ果てています。私は初めて飲んだ時の感動からその味や、歴史やその周りにまつわるものまで魅了された人の一人です。これからもどんどん知って奥深いところまでご紹介していきたいと思います。