カルヴァドスの瓶に林檎がまるごと入っている謎
今回のコラムのテーマは、『カルヴァドスの瓶に林檎がまるごと入っている謎』です。 カルヴァドスとは、林檎から作られたブランデー。
イングリッド・バーグマン主演の名画「凱旋門」のシーンにも登場した、思い出のお酒です。 さらに、ミッキー・マウスの産みの親であるウォルト・ディズニーの「ディズニー」の由来は、カルヴァドス県のイズニーで、後に英語風に直されたからだそうです。
今回は、『カルヴァドスの謎とその魅力』に触れて行きたいと思います。
天然の風味を封じ込める伝統の技法
洋酒がお好きな方はご覧になったことがおありかと思います。
瓶の口よりもはるかに大きな林檎が入っています。
さて、どのようにして林檎を瓶の中に入れたのでしょうか?
入るように林檎を切って、中でつなげた?
瓶を半分にしておき、林檎を入れた後に瓶を溶接した?
そのミステリーを解く鍵は、製法にあります。
春、リンゴの実がまだ小さい内に、その実を空瓶の口から通し、瓶を木の枝に直接くくり付けます。 こうすると、瓶の中で林檎が成長します。
9月末にリンゴが成熟すると、瓶とともに木から注意深く切り離されます。
そしてアルコール度数45%の1回目のAOCカルヴァドスを瓶に注ぎ、リンゴの実をアルコールに浸します。
最低3週間から4週間経過した後、瓶内に残ったカルヴァドスを空け、2回目のアルコール度数45%のAOCカルヴァドスを瓶に注ぎます。
更に4~5週間後、瓶のカルヴァドスを再び空け、アルコール度数40%の3回目のAOCカルヴァドスを注ぎ、瓶は封をされ、出荷されます。
製造には、多くの時間・手間・技術が要求されます。天然の産物であり、工業的に量産することはできません。 天然の風味をそのまま封じ込めるために、編み出された独特の製法が、味わいの秘密でもあるのです。
林檎の芳香を引き立てる洋ナシの存在
フランス北部にあるノルマンディー地方の気候は、ブドウの栽培には適さないため、ワインは造られていません。
その代わりに、特産の林檎から作った発泡酒である「シードル」があり、シードルをさらに蒸留して造ったものが「カルヴァドス」です。
アルコール度数40度、ブランデーならではの芳香をもつ酒で、おもに食後酒として飲まれます。 1リットルのカルヴァドスを造るのに、なんと約80kgのリンゴが必要とされ、最低2年間樽で熟成されます。
年を経るにつれ、よりまろやかで香りの強いものとなり、「オル・ダージュ Hors d’Age」と称される高級品となります。
なお、発泡酒のシードルとカルヴァドスを合わせたものは、「ポモー」と呼ばれます。 甘口で口当たりがよく、デザートとともに、あるいは食前酒としても楽しめます。
しかし実は、カルヴァドスの原料は林檎100%ではありません。 通常カルヴァドスには洋ナシを15%ほど混ぜて熟成させます。
りんごだけで作ると甘みが強く出るので、洋ナシを加えて酸味と甘みのバランスを調え、味を引き締めているのです。 主原料となる林檎は、非常に酸っぱくて、生で食べてもあまりおいしくないものが多いとか。 フランスにも様々な品種の林檎があり、カルヴァドスは何十種類もの林檎をブレンドして、銘柄ごとに個性のある味を作り出しています。
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食後のチーズや、シガーとの相性がよいカルヴァドス。 本場ノルマンディー地方では、カルヴァドスをストレートで味わうのが一般的。 しかし、最初の1杯や強いお酒を普段あまり口にしない方は割って飲むのもおすすめです。
定番ジャックローズ(カルヴァドス、ライムジュース、グレナディンシロップ)から、甘みのあるトニックウォーターで割ると爽やかなシードル風に、りんごジュースや酸味が少ないオレンジジュースを加えると軽い感じのカクテルになります。
ノルマンディー地方では朝のコーヒーにもカルヴァドスを入れるそうで、 その名も「カフェ・カルヴァ」。
深煎り豆でいれたフレンチコーヒーにカルヴァドスを加えると、豊かな香りが広がり、体も温まります。 皆さんもカルヴァドスを飲んで、心も身体も温めてみませんか。
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