世界各地にたくさんあるお酒の種類とその特色をわかりやすく解説
お酒の基礎知識と分類の仕方
そもそもお酒とはどんなものなのでしょうか?甘酒や梅酒はお酒?ノンアルコールビールは?などと疑問に思う方は少なくないはずです。まずはお酒の定義や歴史など、基本的な知識から説明しましょう。
お酒の定義
日本におけるお酒の定義は酒税法によって明確に決められています。その定義とは「15℃以上においてアルコール分1度以上の飲料」というものです。「15℃以上」という前提があるのは、温度によって液体の容量が変化するため、厳密に定義しているということでしょう。 度数は%と同じなので、1度とは1%です。アルコール1%以上がお酒ということは、1%未満はお酒ではないということになります。甘酒、梅酒、ノンアルコールビールがお酒かどうかの境目は1%という数字なのです。お酒の歴史
お酒がいつからあるかはわかりません。文字が発明されるよりも前から人類がお酒をたしなんでいたのは間違いないでしょう。人類最古の酒とされているハチミツ酒は天然の発酵によってできるので、旧石器時代からすでに飲まれていたという説が一般的です。 紀元前3000年の古代メソポタミアでワインと思われるお酒が造られていたという記録(絵と象形文字からの推測)も残っています。ギリシア神話には豊穣とブドウ酒の神、デュオニソスが登場。日本神話でもスサノオノミコトがヤマタノオロチを退治する際に酒樽を使ったとされています。祭事、神事などでも酒が重要な役割を果たしており、人類とお酒とは大昔から深い関係にあったのです。醸造酒と蒸留酒と混成酒
お酒は製造方法によって醸造酒と蒸留酒と混成酒の3つに分類されます。 醸造酒とは酵母の発酵作用を利用して製造するお酒のことです。原料を大きく分けると、穀物と果実の2種類。穀物が原料となる醸造酒の代表的なものはビールと日本酒、果実が原料の醸造酒の代表的なものはワインです。 蒸留酒は醸造酒を蒸留したもので、アルコール度数が高くなる傾向があります。蒸留酒も醸造酒と同じように、穀物と果実という2つの原料で分けることが可能です。穀物が原料の蒸留酒の代表的なものはウイスキー、焼酎、ラム、ジンなど。果実が原料である蒸留酒の代表的なものとしてブランデーがあります。 混成酒は醸造酒や蒸留酒を原料としながら、その他に果実、ハーブ、スパイス、植物の皮、甘味料、香料などを配合したお酒です。代表的なものはリキュール、ベルモット、梅酒など。薬用酒も混成酒に分類されます。糖分を発酵させて作る醸造酒
醸造酒の代表的な存在であるワイン、ビール、日本酒について、くわしく解説していきます。
ワイン
ワインはぶどうを原料とする醸造酒です。ワインを大きく分けると、スティルワイン、スパークリングワイン、フォーティファイドワイン、フレーヴァードワインの4つに分類されます。一般的にワインと呼ばれているもののほとんどはスティルワインです。 スティルワインはさらに3つに分類されます。黒ぶどうを皮ごと一緒に漬け込んで作るのが赤ワイン、白ぶどうの果汁だけを漬け込んで作るのが白ワイン、その中間のものがロゼです。 ロゼは黒ぶどうの果汁だけを使う方法、赤ワインと白ワインを混ざる方法など、いくつかの製造方法があります。これらのスティルワインはぶどうの品種によっても分類されており、おもなぶどうの品種はカベルネ・ソーヴィニヨン、ピノ・ノワール、シャルドネ、リースニング、甲州など。また産地、ワインの製造される地域、醸造所などによって、さらに細かく分類されています。 スパークリングワインは炭酸が入っている発泡酒です。スパーンリングワインの中で、フランスのシャンパーニュ地方で作られ、フランスのAOC法というワインの既定の条件を満たしたものがシャンパーニュ(Champagne)と呼ばれ、日本では読み方を簡略化したシャンパンという名前で親しまれてます。 フォーティファイドワインはワインの製造過程でブランデーなどを加えたものです。代表的なフォーティファイドワインはシェリー、マルサラワイン、マデイラワインなど。スティルスワインよりもアルコール度数が高いという特徴があります。 フレーバードワインはスティルワインに果汁などを加えたものです。代表的なフレーバードワインはサングリアやベルモットなど。ワインにオレンジやレモン果汁を加えたサングリアはスペイン、ポルトガルなどで人気のお酒です。ビール
ビールは大麦の麦芽をビール酵母によってアルコール発酵させて、ホップで香りづけして造るお酒です。副原料として麦、米、トウモロコシ、じゃがいもなどが使われる場合もあります。ビールには造り方や材料によって、さまざまな種類がありますが、大きく分けると、エールとラガーの2種類です。 エールは麦芽が発酵した際に、上に浮く上面発酵を使ったもの。複雑な芳香と深いコク、濃厚な味わいが特徴的で、ペールエール、スタウト、ヴァイツェン、アルトビール、ケルシュなどがあります。 ラガーは下面発酵を使ったものです。エールよりも歴史が新しく、すっきりとした爽快な味が特徴的で、ピルスナー、シュバルツ、ボックなどがあります。 ビールはドイツ、アメリカ、日本を始めとして、さまざまな国で作られているお酒です。大企業で製造されているビールと違って、小さな醸造所で作られているビールのことをクラフトビールと呼び、その土地土地によって独自色の強いビールが造られているところが特徴となっています。日本酒
日本酒は白米を蒸して、米こうじと水を加えて、発酵させて造るお酒です。製造方法や精米歩合によって、吟醸酒、大吟醸酒、純米酒、純米吟醸酒、純米大吟醸酒、特別純米酒、本醸造酒、特別本醸造酒などに分けられます。 吟醸酒は60%以下の精米歩合を原料として、米を長期低温発酵させる吟醸造りという製法で造るお酒です。豊かな香りと味が特徴的。「吟醸」には原料を吟味して丁寧に醸造したものという意味があります。 大吟醸酒は精米歩合を50%以下にして、吟醸酒よりも低温で長期醗酵して造ります。清涼感ある味わいと豊かな香りが特徴的です。 純米酒は米と米こうじと水のみで造られた日本酒で、米独特のうま味や甘みやコクが際立っています。醸造アルコールが一切含まれておらず、米の味わいがそのままお酒に封じ込められているのです。純米酒は食事にも合う日本酒として親しまれています。 純米吟醸酒は吟醸酒と同じように吟醸造りで製造されるお酒です。米のまろやかな味わいとすっきりとした口あたりが特徴となっています。 特別純米酒はその名前のとおり、特別な製造方法で作られるお酒です。特別というのは木槽によってしぼる、通常よりも長期間発酵させるなど、一般的な造り方とは違った製法を表しています。酒蔵独自の製法と技術によって個性的な日本酒が造られているのです。 本醸造酒は米と米こうじと水と醸造アルコールを原料としている日本酒で、精米歩合は70%以下と定められています。醸造アルコールによって調節することによって、バランスの良い、すっきりとした味わいになるのです。 特別本醸造酒は米をよく磨くなどの特別な造り方を施した本醸造酒で、繊細な味わいが魅力となっています。液体を蒸発させて作る蒸留酒
醸造した後に蒸留という過程を経て造られるのが蒸留酒です。代表的な蒸留酒であるウイスキー、ブランデー、焼酎について解説していきましょう。
ウイスキー
ウイスキーは大麦、ライ麦、トウモロコシなどの穀物を麦芽の酵素で糖化して発酵させ、さらに蒸留して製造するお酒です。ウイスキーにはさまざまな種類がありますが、製造方法によって大きく3つに分けられます。大麦麦芽だけで製造されるものがモルトウイスキー、トウモロコシなどの穀物を原料としたものがグレーンウイスキー、この2つをブレンドしたものがブレンデッドウイスキーです。 スコットランドや日本では1つの蒸留所のモルトウイスキーだけで造られたものはシングルモルトウイスキーと呼ばれており、蒸留所の生み出す個性的な味をダイレクトで堪能できます。ブレンデッドウイスキーはバランスが良く、複雑な味わいが魅力的。 ウイスキーの産地によってもそれぞれに特色があります。スコットランドのスコッチ、アイルランドのアイリッシュウイスキー、アメリカのアメリカンウイスキー、カナダのカナディアンウイスキー、日本のジャパニーズウイスキーは世界5大ウイスキーと呼ばれていて、それぞれ独自の文化によって育まれた味が魅力的です。ブランデー
ブランデーはワインなどの果実酒を蒸留して造ったお酒です。もともと「焼いたワイン」を意味するオランダ語の「brandewijn」がブランデーの語源となっています。ワインのアルコール度数が14度くらいであるのに対して、ブランデーは約40度とアルコール濃度は高めです。ブランデーの中でも特に評価も知名度も高いのがフランスを代表するコニャック、アルマニャク、カルヴァドスの3つ。 コニャックはフランスのコニャック市周辺で作られているブランデーです。濃厚かつフルーティーな味わいが特徴で、熟成年数によって、スリースター、V.S.、V.S.O.P、ナポレオン、X.O.、オル・ダージュなどの等級があります。 アルマニャックはフランスのアルマニャック地方で作られているブランデー。単式蒸留機で2回蒸留するコニャックに対して、半連続式蒸留機で1回だけ蒸留して作られます。 カルヴァドスはりんごで作られるブランデーです。アルコール度数はやや高めですが、飲みやすく、りんご独特の香りが特徴となっていて、カクテルのベースとしても使用されています。 フランス産以外ではイタリアのグラッパ、スペインのシェリー・ブランデー、ハンガリーのフルーツブランデーなどが有名です。なおこのフルーツブランデーはプラム、杏、洋ナシ、チェリーなどで造られています。焼酎
焼酎は見た目こそ日本酒と似ていますが、お酒としての製造方法はまったく違うものです。日本酒が醸造酒であるのに対して、焼酎は蒸留酒であるという大きな違いがあります。日本酒の原料が米と米こうじであるのに対して、焼酎は米の他に麦、いも、そば、黒糖、じゃがいも、トウモロコシ、シソ、ごま、牛乳など原料が多彩です。 おもな焼酎はいも、麦、米の3つ。いも焼酎はさつまいもの甘い香りと独特のコクが魅力的です。麦焼酎はマイルドでありながら、スッキリとしているので、焼酎の初心者でも飲みやすいお酒。米焼酎は米のほのかな甘みとまろやかな口当たりの焼酎です。お酒に果実や植物や香料を混ぜて作る混成酒
混成酒の代表的なものである梅酒とリキュールとベルモットについて解説します。
梅酒
梅酒はホワイトリカー、焼酎、ブランデーなどの蒸留酒に青梅を漬けて造るお酒です。梅酒の中でも梅と糖類と酒類のみを原料として、酸味料などを一切使用していないものは日本洋酒酒造組合の制定した基準によって、「本格梅酒」と呼ばれています。 梅の甘みと酸味、香りを楽しめること、梅の収穫期である6月ころに漬けるため、季節を感じられることなどが梅酒の魅力です。なお飲み頃は漬けてから6か月後となっています。リキュール
リキュールは中世ヨーロッパで飲まれていた薬酒がもとになっているお酒です。当時は薬草を漬けていましたが、現在は蒸留酒にハーブ、果実、やナッツ、カカオなどを漬けて、砂糖やシロップなどの糖分を加えて造ります。さまざまなものを漬け込むことができて、組み合わせも自由なので、種類は無限といっていいでしょう。 人気なのはカシスリキュール、マスカットリキュール、ココナッツリキュールなど。これらのように香りが良く、見た目の鮮やかなリキュールがたくさんあります。ベルモット
ベルモットは白ワインにハーブやスパイスを漬けこんだフレーバードワインのことです。ベルモットという名前はドイツ語の「wermut」(ヨモギの一種)から来ています。 かつてはこのヨモギの一種のハーブがよく使われていたのですが、現在はさまざまなハーブ、スパイスが使用されていて、種類も豊富です。現食前酒やカクテルの材料としても使用されています。コンビニに並ぶ新定番のお酒
オンライン飲み会や宅飲みがすっかり定着して、お酒の調達場所としてコンビニを活用する人も増えています。コンビニのお酒のコーナーにはさまざまなアルコールが置かれていて、種類も銘柄も豊富です。ここではコンビニで人気のお酒について解説します。
庶民の味方の発泡酒と第3のビール
ビールよりも値段が安くて、飲みやすいため、根強い人気をキープしているのが発泡酒と第3のビールです。発泡酒は麦芽の比率が50%未満、もしくは副原料の使用割合が5%を超えるものと定義されています。 第3のビールは大麦や小麦など麦芽以外の穀物を原料としたスピリッツや焼酎に、発泡酒を混ぜて造ったお酒です。通称は第3のビールですが、実際の商品名にはビールという言葉は使われていません。糖質、プリン体、人工甘味料が入っていない商品も発売されていて、ダイエットに気を配っている人からも支持されています。人気のカクテルと缶酎ハイ
カクテルはバーに行って飲むものという認識がかつては一般的でしたが、いまやコンビニにも缶入りの人気カクテルが並び、手軽に楽しめるようになりました。ハイボール、ジントニック、スクリュードライバーなど、種類も豊富です。 缶入りの酎ハイも人気商品です。レモンサワー、グレープフルーツサワーなどはもちろんのこと、抹茶やカルピスなどの個性的なものもあり、多彩な酎ハイが販売されています。世界にはたくさんのお酒がある
ここまで紹介しきれなかったお酒がたくさんあります。ここでは珍しい原料で作られたお酒を紹介していきます。
アフリカのバナナ酒やヤシ酒やハチミツ酒
アフリカ大陸にはたくさんの種類のお酒があります。その中でも有名なのがバナナ酒。製造方法は土地によってさまざまですが、バナナの果汁を加熱せずにそのまま発酵させる製造方法が一般的です。発酵の時期によって甘みが変化するため、その味の変化を楽しむこともできます。 ヤシ酒もアフリカの各地で作られているお酒です。ヤシはアフリカのさまざまな国で植えられているだけでなく、自生しているため、広い地域で簡単に造ることができます。ヤシの樹液には天然酵母が含まれており、自然に発酵させることによって手軽に製造できるお酒なのです。白濁した半透明のお酒で、ココヤシ、アブラヤシ、ラフィアヤシなど、ヤシの種類によって、味はかなり異なります。 ハチミツ酒もアフリカの各地で飲まれているお酒です。アフリカ以外でも、東欧、中南米など、さまざまな国にもハチミツ酒が存在しています。ハチミツ酒はハチミツと水を混ぜておくだけで、自然に発酵してお酒になるため、人類最古のお酒という説が一般的です。世界各地のその他のお酒
ここまでたくさんの種類のお酒を紹介してきました。世界各地には実に多様なお酒があります。ロシアのウォッカ、中国の紹興酒、インド・ネパールのチャン、デンマークやスウェーデンなど北欧のアクアビットなどなど。人のいるところには必ずお酒があります。つまりそれだけお酒が人々の暮らしと密着したものであるということでしょう。まとめ
お酒は暮らしを彩るものであると同時に、食文化を構成する要素のひとつです。お酒の知識がなくてもお酒を楽しむことはできますが、それぞれのお酒の背景を知ることによって、お酒の楽しみ方も広がります。自分に合ったお酒を見つけ、飲み過ぎに注意し、節度を持って楽しむことによって、日々の生活は豊かなものになるでしょう。