ここぞという時に使える!シーン別の代表的なカクテルの言葉を紹介
カクテルの言葉とはどんなもの?
花言葉は19世紀の西洋において、貴族の間で花を擬人化して詩を書くことが流行したことから派生したという説が一般的です。ではカクテル言葉はいつどこで始まったのでしょうか?カクテル言葉の基礎知識も含めて解説していきます。
カクテルの言葉が生まれたきっかけ
カクテル言葉がどうやって生まれたのか、はっきりしたことはわかっていません。広まったのは20世紀に入ってからです。通説となっているのはアメリカの禁酒法が間接的なきっかけになったというもの。 アメリカで1920年から1933年にかけて施行された禁酒法によって、バーテンダーは働く場所を失い、一斉に職を求めてヨーロッパに移り住みました。その過程でカクテル文化がヨーロッパの各地に根づき、カクテル言葉が誕生したのではないかといわれています。アメリカで生まれたカクテルとヨーロッパ独特の間接的な表現を好む文化とが結びつくことで、カクテル言葉が生まれたというわけです。カクテルの言葉の由来や成り立ち方
カクテル言葉の由来はさまざまです。カクテルの名前からの連想、味や見た目からの連想、カクテル誕生のエピソードとの関連などなど。カクテル言葉からカクテルにまつわる物語が見えてくるケースもあります。どんな場面で使われるか?
カクテル言葉がもっとも多く使われるのはバーでしょう。カクテルがバーでの会話をはずませる役割を果たすこともありそうです。 ここ数年、増えているのはカクテルの写真をSNSに投稿してメッセージを伝えるというもの。カクテルは見た目も美しいので、インスタ映えします。わかる人にだけわかる暗号めいたところも人気の秘密。 意中の人に向けて、カクテルに思いを託してSNSに投稿し、相手から「いいね!」がついたら、動揺してカクテルをこぼしてしまうかもしれません。SNSがカクテル言葉を拡散する時代となったのです。定番カクテルの言葉
まずは定番中の定番カクテルの言葉を紹介します。
マティーニ、棘のある美しさ
カクテルの王様と呼ばれているマティーニはジンとドライ・ベルモットとオリーブを入れて作ります。アルコール度数が高いため、飲みすぎると、危険なカクテルです。「棘のある美しさ」というカクテル言葉はこのお酒の雰囲気に合っているといっていいでしょう。 このカクテル、数多くの映画に登場しますが、特に有名なのは「007」シリーズです。ちなみにボンドはジンの代わりにウォッカを入れて飲んでいます。ボンドガールが実は敵で裏切られたという展開も多く、「棘のある美しさ」というカクテル言葉は「007」シリーズにもぴったりです。ジントニック、強い意志
ジントニックはジンをウォータートニックで割って、ライムを絞ったカクテル。甘さは抑えめでキリッとした口当たりが特徴。味からの連想なのか、カクテル言葉は「強い意志」です。悩める友人にジントニックを差し出し、励ましのメッセージとするのもいいでしょう。ギムレット、長いお別れ
ギムレットはジンにライムジュースを混ぜたカクテルです。この名前は19世紀末にイギリス海軍の軍医であったギムレット卿にちなんでつけられました。戦艦で配給されたジンを飲む将校の健康を心配して、「健康のためにライムジュースを混ぜよう」と提唱したのが始まりとされています。 ギムレットのカクテル言葉は「長いお別れ」。レイモンド・チャンドラーのハードボイルド小説「長いお別れ」からつけられました。この小説に「ギムレットには早すぎる」という言葉が登場するのです。「長いお別れ」の原題は「The Long Goodbye」で、永遠の別れといったところでしょうか。「さよならをいうのはわずかのあいだ死ぬことだ」もこの小説に登場する名フレーズです。愛の告白の言葉
カクテル言葉でもっとも多いものは愛の告白の言葉でしょう。そんな愛の言葉の意味を持ったカクテルを3つ紹介します。
アプリコットフィズ、振り向いて下さい
アプリコットフィズはアマレット(アプリコットを漬けこんだブランデー)にレモンジュースを混ぜて、砂糖と炭酸を加えたカクテルです。カクテル言葉は「振り向いて下さい」。この言葉はアマレットにまつわる16世紀のイタリアの画家、ベルナルディーノ・ルイーニの恋にちなんだものです。彼は教会で聖母マリアのフレスコ画を描く仕事を任されたのですが、絵のモデルとして雇われた女性と恋におちてしまいます。この時に相手に贈ったのがアマレットの原型のお酒でした。この物語を踏まえて、このカクテル言葉が誕生したのです。スクリュードライバー、あなたに心を奪われました
スクリュードライバーはウォッカをオレンジジュールで割ったカクテルです。カクテル言葉は「あなたに心を奪われました」。イランの油田で働いていたアメリカの作業員がウォッカにオレンジジュースを混ぜて飲み、マドラーがなかったため、工具であるスクリュードライバーで混ぜて飲んだのが名前の由来とされています。 「あなたに心を奪われました」というカクテル言葉は口当たりがいいのにアルコール濃度が高いことからつけられたとされています。心を奪われそうになるくらい、一気に酔いがまわるということでしょう。ロブロイ、あなたの心を奪いたい
ロブロイはスコッチウイスキーにスイートベルモットを混ぜて、アロマティックビダーズを加えたカクテルです。カクテル言葉は「あなたの心を奪いたい」。カクテル名は17世紀末から18世紀にかけて、スコットランドの義賊とした名をはせたロバート・ロイ・マクレガーにちなんでつけられました。彼が赤毛であったこと、カクテルも赤みがかっていることから、このカクテルは「赤毛のロバート」とも呼ばれています。 カクテルが誕生したのはロンドンのホテル、ザ・サボイのバーで、バーテンダーのハリー・クラウドッグによってでした。「セント・アンドリューズ・デー」というパーティーのために考案されたのです。このカクテルの深い赤い色が情熱を連想されるものだったことから、このカクテル言葉が生まれたといわれています。両思いのハッピーな言葉
恋人同士や夫婦が互いの愛情を表現するカクテル言葉もたくさんあります。自分の気持ちを相手に何度でも伝えたい。そんなハッピーなカクテル言葉を紹介しましょう。
テキーラサンライズ、情熱的な恋
テキーラサンライズはテキーラとオレンジジュースとグレナデンシロップをミックスしたカクテルです。グラスの底に沈んだグレナデンシロップの赤が朝陽に似ていることから、この名前がつけられました。カクテル言葉は「情熱的な恋」。朝陽のエネルギッシュなイメージと恋心とをかけて、この言葉になったのでしょう。 テキーラサンライズというタイトルの曲も有名です。アメリカ西海岸を代表するロックバンド、イーグルスが1973年に同名の曲を発表しています。歌の主人公が片思いの相手に告白できず、勇気を出すためにテキーラサンライズを飲むのですが、決心がつかず飲みすぎてしまう設定。両思いだけでなく、せつない片思いにもぴったりなカクテルなのです。キール、あなたに出会えてよかった
キールは白ワインをカシスリキュールで割ったカクテル。キールのカクテル言葉は「あなたに出会えてよかった」です。この言葉がどういう経緯でついたのかは定かではありませんが、このキールの誕生の物語自体がまさに、最高の出会いを象徴しています。 フランスのディジョン市の市長であったキャノン・F・キール氏がブルゴーニュ特産品の白ワインアリゴテとカシスをミックスして作ったのが始まりなのです。地元白ワインの宣伝のために考案したのですが、このカクテルが大人気となり、地域経済の活性化にもつながりました。まさに白ワインとカシスとの最高の出会いです。キールというカクテル名は市長の名前からつけられました。ジンライム、色褪せぬ恋
ジンライムはジンにライムジュースを加えたシンプルなカクテルです。シェイクすると、ギムレットになります。つまりこのジンライムもギムレット同様に、イギリスの軍医だったギムレット卿が考案したものなのです。 このジンライムのカクテル言葉は「色褪せぬ恋」。由来は定かではありませんが、ジンもライムジュースも強い香りがして、その香りが簡単には消えないことからつけられたのではないかといわれています。つきあいの長い恋人同士、もしくは夫婦間で一緒に飲むのもいいでしょう。断りの言葉
好きではない相手から告白されて、困惑した経験のある人もいるでしょう。角を立てずにどうやって断るべきか。そんな時に便利なカクテル言葉を3つ紹介しましょう。
ブルームーン、無理な相談、叶わぬ恋
ブルームーンはジンとバイオレットリキュールとレモンジュースをミックスしたカクテル。バイオレットリキュールの青紫色が神秘的で、ブルームーンという言葉がぴったりです。もともとブルームーンとは青く見える満月のことで、いくつかの条件が重なった時にブルームーンになるとされています。 カクテル言葉は「無理な相談」と「叶わぬ恋」。もしバーで一緒に飲みに行った相手がブルームーンを頼んだら、要注意かもしれません。やんわりと拒絶されている可能性があるからです。ただしこのカクテルにはややこしい要素があります。中に入っているバイオレットリキュールには「完全な愛」という意味があるのです。恋する人間を混乱させるカクテル、それがブルームーンといえます。トワイライトゾーン、ご遠慮します
トワイライトゾーンはホワイトラム、グレープフルーツジュース、アプリコットブランデー、カシスリキュールをミックスしてシェイクしたカクテルです。トワイライトゾーンは英語で薄暮の意味があり、カクテルの色が夕暮れ時の微妙な空模様を連想させることから、この名前がつきました。カクテル言葉は「ご遠慮します」。恋のアプローチをやんわりとことわる時に使えそうです。グレープジュースのほろ苦さは恋のほろ苦さでもあります。アイスブレーカー、冷静になって下さい
テキーラ、ホワイトキュラソー、グレープフルーツジュース、グレナデンシロップをミックスしてシェイクして、氷を入れたグラスに注いだものがアイスブレーカーです。氷を細かく砕くことから砕氷船という意味のアイスブレーカーという名前になりました。 カクテル言葉は「冷静になって下さい」。熱くなった心をキリリと冷えたアイスブレーカーで冷まして下さいということでしょう。このアイスブレーカーは「緊張をほぐす」という意味もあります。「落ち着いて、ひと呼吸入れて」というニュアンスもあるので、100%ことわりの言葉と判断するのは早計かもしれません。友情や親愛の情を示す言葉
カクテル言葉は恋愛の場面以外でも使えるものがたくさんあります。友達に対してカクテルに気持ちを託したい時に使えるカクテル言葉などを紹介しましょう。
フローズンマルガリータ、元気を出して
テキーラ、ホワイトキュラソー、ライムジュースをミックスしたものがマルガリータですが、クラッシュドアイスに注ぐと、フローズンマルガリータになります。フローズンマルガリータのカクテル言葉は「元気を出して」です。 もともとのマルガリータという名前の由来から述べておきましょう。マルガリータを考案したのはロサンゼルスのバーテンダー、ジョン・デュレッサーで、1949年です。マルガリータという名前は彼の亡くなった恋人の名前にちなんでつけられました。ふたりが狩猟に行った際に流れ弾に当たる事故で恋人が亡くなってしまったのです。悲劇的な背景があることから、マルガリータのカクテル言葉は「無言の愛」「悲恋」となりました。 そのエピソードを踏まえて、彼の心を慰める意味もこめて、フローズンマルガリータには「元気をだして」というカクテル言葉がつけられたのです。友達が落ち込んでいる時に、すっとフローズンマルガリータを差し出すのもいいでしょう。カリフォルニアレモネード、永遠の感謝
カリフォルニアレモネードはウイスキー、レモンジュース、ライムジュースにグレナデンシロップと砂糖と炭酸を合わせたカクテルです。輝く太陽のような美しい色と柑橘系の爽快な味わいはカリフォルニアという地域にもぴったり。 カクテル言葉は「永遠の感謝」です。長いつきあいの友人、両親など家族に対する思いを伝えるカクテルとしても活用されています。母の日、父の日などの記念日に、カリフォルニアレモネードの写真をSNSに投稿するケースも増加中。おいしさや見た目だけでなく、カクテル言葉の意味も人気の秘密となっています。モスコミュール、仲直りをしましょう
モスコミュールはウォッカとライムジュールとジンジャーエールをミックスして作るカクテルです。その起源にはいくつかの説があるのですが、1940年代初頭に、ハリウッドのバーテンダー、ジャック・モーガンが大量にあまったジンジャーエールを消費するために、ウォッカに混ぜたところから誕生したという説が一般的。モスコミュールは「モスクワのラバ」という意味があります。 モスクワはウォッカから来ていて、ラバはアルコール濃度が高く、強烈な飲み物で、キックが強いと評されたことからつけられたとのこと。 モスコミュールのカクテル言葉は「仲直りをしましょう」。ラバという動物がとても強情であることからつけられました。友人、恋人、親兄弟、ケンカした相手にモスコミュールを差し出して仲直りの気持ちを示すと、素直になれそうです。人生の指針となる言葉
人生に迷った時に飲むと、決意が固まるかもしれない。そんなカクテル言葉を紹介しましょう。
ダイキリ、希望
ダイキリはホワイトラムとライムジュースをミックスして、砂糖を加えたカクテルです。19世紀後半にキューバにあった鉱山、ダイキリで働いていた炭鉱夫たちが疲れた体を癒すために、ホワイトラムにキューバの特産物のライムを混ぜて飲んだのが始まりとされています。 ダイキリのカクテル言葉は「希望」です。ハードな労働の中から生まれたカクテルであることからこの言葉がつけられました。困難な状況にある友人を励ます気持ちをこめて、このダイキリを差し出してみるのもいいでしょう。もちろん自分を励ますために飲むのもありです。オールドファッションド、我が道を行く
オールドファッションドは19世紀から飲まれていたアメリカの伝統的なカクテルです。バーボンなどのアメリカンウイスキーに炭酸をミックスし、アンゴスチュラビターズ、角砂糖、スライスオレンジ、スライスレモン、チェリーを入れます。角砂糖は溶かさずに入れて、つぶしながら飲むことで、甘さの変化を楽しめるのです。 カクテル言葉は「我が道を行く」。アメリカ産のウイスキーにこだわっているところなども、「我が道を行く」という精神に通じるものがあります。このカクテルは自分で自伝に気合いを入れるような飲み方もできそうです。ブラッディメアリー、断固として勝つ
ウォッカにトマトジュースを加えたカクテルがブラッディメアリーです。1934年にニューヨークのバーテンダー、フェルナン・プティオが考案しました。 ブラッディマリーとは16世紀のイングランドとアイルランドの女王だったメアリー1世のことです。熱心なカトリック信者であった女王はプロテスタントを迫害して、約300人を処刑して、「血まみれのメアリー」と呼ばれました。血に似たトマトジュースが入っていることから、このカクテルに「ブラッディメアリー」と命名されたのです。 カクテル言葉は「断固として勝つ」。メアリー1世の強硬な姿勢からの連想だと思われます。名前はぶっそうですが、ヘルシーなカクテルで、トマトの他にセロリ、レモン、スパイスなど、さまざまなアレンジが可能です。頭も体も気合いを入れたい時に最適なカクテルといえます。まとめ
ひとつひとつのカクテルにはさまざまな歴史や物語があります。カクテル言葉は時にそれらのストーリーと共鳴して作られてきました。人が作って、人が飲むものだからこそ、その液体の中に人の思いまでもが溶けこんでいるかもしれません。カクテル言葉をきっかけとして、カクテルを楽しく飲むのもいいでしょう。カクテルを味わうことは人生を味わうことでもありそうです。