ウイスキーの原料って何? 原材料で異なる種類や美味しい飲み方を解説
ウイスキーの原料はさまざまです。どのウイスキーがどんな原料で造られているのか、正確に把握している人はそんなに多くはいないでしょう。
ここではウイスキーの原料に焦点を当て、ウイスキーの分類方法、製造方法、味の特徴などを解説していきます。
ウイスキーの原料とは?
ウイスキーの主原料は穀物です。使用される穀物は大麦、トウモロコシ、小麦、ライ麦などが主ですが、他にも米やキヌア、そば、キビ、ダイズなど珍しい原料のウイスキーもあります。
いくつかの穀物をブレンドしてつくられることが多く、それぞれ種類によって使用される割合などが異なるため、ウイスキーは種類が豊富なのです。
これらの原料を糖化し、発酵、蒸溜、熟成させて、ウイスキーはつくられていきます。
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【原料別】ウイスキーの種類は?
ウイスキーは一般的には国別に分類することが多いのですが、ここでは原料別に分類してみましょう。
【モルトウイスキー】大麦がおもな原料
ウイスキーの多くは大麦がおもな原料となっています。該当するのはスコッチ、アイリッシュウイスキー、ジャパニーズウイスキーなどで、国の定義によって例外はありますが、一般的に大麦のみを原料としているものがモルトウイスキーと呼ばれるのです。
【コーンウイスキー】トウモロコシがおもな原料
トウモロコシのお酒として有名なのはバーボンです。アメリカの法律によって、原料の51%以上、80%未満がトウモロコシであるものがバーボンと定義づけられています。
なおトウモロコシを80%以上使用したものはコーンウイスキーと呼ばれるのです。
トウモロコシ、ライ麦、小麦などの穀物がおもな原料となっているのがグレーンウイスキーと呼ばれるウイスキーです。
グレーンは英語では「grain」と表記され、穀物全般のことを指します。
原材料にグレーンと表示されている場合には、どんな穀物がどれくらいの割合で配合されているのかはわかりません。
【ライウイスキー】ライ麦がおもな原料
ライ麦をおもな原料として造られているのがライウイスキーです。ライウイスキーには厳密な定義があります。
51%以上のライ麦を原料として使ったものがストレートライウイスキーと呼ばれているのです。
ライ麦をおもな原料としているウイスキーの代表的な存在がカナディアンウイスキーといっていいでしょう。
ライ麦が主原料の原酒にトウモロコシが主原料の原酒をブレンドして製造。
ライ麦中心の原酒の比率が高くなるとスパイシーになり、トウモロコシ中心の原酒の比率が高くなると、まろやかになる傾向があります。
カナダでライ麦を使ったウイスキーが多く造られているのは、ライ麦が小麦や大麦と比べると、寒さに強いという特長があり、カナダのような寒冷地に適した穀物だからです。
【ホイートウイスキー】小麦がおもな原料
原料の51%以上が小麦でつくられているものを、ホイートウイスキーといいます。主な産地はアメリカ。
アメリカンウイスキーの中では比較的新しい種類で、よりやわらかい味わいを求めるニーズに応えるため、誕生しました。(表記がウィートウイスキーであることも。)
他の種類と同様、ホイートウイスキーにも定義があります。
アルコール度数80%未満で蒸留、新品のオーク樽で熟成させるなど、アメリカンウイスキーの特徴的な製造方法です。
また、ストレートホイートウイスキーと呼ぶには、2年以上の熟成が必要であるなどのルールもあります。
小麦由来のまろやかな甘みが感じられるものが多く、飲みやすいウイスキーです。
【グレーンウイスキー】小麦がおもな原料
複数の穀物をブレンドしてつくられているのがグレーンウイスキー。グレーンとは「穀類」の意味を持ち、小麦やライ麦、トウモロコシが使用されています。
ホイートウイスキーやコーンウイスキーなどと違って主原料の比率の決まりはありません。
多くは、モルトウイスキーとブレンドされるブレンデッドウイスキーの原酒としてつくられています。
モルトウイスキーは力強く個性が強いウイスキーであるのに対して、グレーンウイスキーはすっきりとした味わい。
ブレンデッドウイスキーに使用されることが主ですが、近年ではシングルグレーンウイスキーを楽しむことも増えてきています。
珍しい原料を使ったウイスキー
ここまで大麦、トウモロコシ、ライ麦、小麦が原料となるウイスキーを紹介してきました。
しかし穀物はこの4種類だけではありません。世界各地ではさまざまな穀物を原料とするウイスキーが作られてきました。
いくつか、紹介しましょう。
【ライスウイスキー】米がおもな原料
麦がウイスキーの原料になるならば、米だってウイスキーの原料になるのではないかと考える人もいるでしょう。実際にかつて日本でキリン・シーグラム社(現在のキリンディスティラリー)から「ライスウイスキー」が静岡県限定で発売されていたことがあるのです。
一般的に米のお酒というと、まず日本酒と米焼酎が思い浮かびます。
ウイスキーが蒸留酒であることから考えると、ライスウイスキーは同じ蒸留酒である米焼酎と近いお酒だと推測されるでしょう。
ライスウイスキーは原料となる米を糖化して発酵させ、蒸留することによって造られます。
発酵する段階でモルトを混ぜることが大きなポイントです。
比率は米7割に対してモルト3割。
雑味のないすっきりとした味と米の風味、透明の液体が特徴となっています。
富士御殿場蒸溜所で製造されて、1994年から販売を開始しました。
しかし1997年に生産が終了しているため、現在、流通していたとしても、きわめて少ない数で入手は困難な状況です。
しかしライスウイスキーは他にもあります。
2020年4月には「エッセンス・オブ・サントリーウイスキー ライスウイスキー」が販売開始となりました。
メーカーはサントリースピリッツ株式会社で、芋焼酎で有名な鹿児島県の大隅酒造で製造されています。
米にモルトを混ぜて発酵させ、ホワイトオーク樽で3年以上熟成したウイスキーです。
白桃のようなフルーティーな香りとふっくらとしたまろやかな味わいが特徴。
ラベルには大きく「新」の文字があります。
新たなる挑戦の意気込みがラベルからも伝わってくるのです。
【そばウイスキー】蕎麦がおもな原料
蕎麦が原料となっているウイスキーもあります。エデューシルバーという名前のウイスキーで、製造しているのはフランス、ブルターニュ地方のメニール蒸溜所です。
蕎麦の実を原料として、2度蒸留して、コニャックの樽で5年間熟成させて製造。
ハチミツ、バニラ、さらにはオレンジピールなどの柑橘系の香りとやわらかな口当たりが特徴的です。
このエデューシルバーの他に、10年以上熟成させたエデューゴールド、15年以上熟成されたエデューディアマンなども製造されています。
【キヌアウイスキー】キヌアがおもな原料
キヌアはNASAが21世紀の宇宙食として高評価しているスーパーフードです。南米のボリビアでとれる雑穀で、タンパク質、食物繊維の他に、カルシウム、マグネシウムなどの鉄分を大量に含む健康食品として注目されています。
このキヌアを原料としてウイスキーを造っているのがアメリカ、テネシー州ナッシュビルにあるクラフトディスティラリー(手作業によってウイスキーを製造する小規模の蒸留所)として有名なコルセア蒸留所です。
この蒸留所は「オルト・ウイスキー」、つまり既存のウイスキーとは異なる新たなウイスキーを開発することを目標として掲げて、さまざまなウイスキーを製造してきました。
その代表的なもののひとつがキヌアを原料としたコルセアキヌアです。
キヌア2、モルト8の割合で混ぜた原料を使い、単式蒸留器で蒸留。バニラ、ヘーゼルナッツのような香りとほのかな甘みが特徴的で、飲みやすいウイスキーとなっています。
モルトウイスキーとシングルモルトウイスキーについて
モルトウイスキーはそのまま「モルトウイスキー」と呼ばれるもの、「シングルモルトウイスキー」と呼ばれるものなど、いくつかに分かれます。
呼び名とその定義について、整理しておきましょう。
国によって定義が変わるモルトとシングルモルト
モルトとは発芽した大麦麦芽のことです。発芽することによって糖化して発酵が可能になります。
大麦のみを使ってモルトで発酵させたウイスキーがモルトウイスキーです。
モルトウイスキー、シングルモルトウイスキーなどの呼び方があり、国によって定義が変わる場合もあります。
特にスコットランドとアメリカでは大きな違いがあるので注意が必要です。
スコッチウイスキーのモルトウイスキーの定義は大麦麦芽のみを原料とし、単式蒸留釜によって2回から3回蒸留させたものとなっています。
一方、アメリカンウイスキーのモルトウイスキーの定義は大麦が原料の51%以上のものとなっているのです。
スコットランドが大麦のみと定義されているのと大きな違いがあります。
アメリカにおけるシングルモルトウイスキーは大麦のみで造られたウイスキーと定義されているため、ややこしいところがあるのです。
つまりスコットランドのモルトウイスキーがアメリカにおけるシングルモルトウイスキーと対応しているといっていいでしょう。
スコットランドにおけるモルトとシングルモルトの違い
モルトウイスキーとシングルモルトウイスキーの定義は国によって違う部分がありますが、ここではスコットランドのスコッチのモルトとシングルモルトの違いを解説します。スコットランドのモルトウイスキーは大麦だけを原料として単式蒸留によって蒸留したものです。
異なる蒸留所のモルト原酒をブレンドしたものをブレンデッドモルトウイスキーといいます。
シングルモルトウイスキーは同じ蒸留所で熟成された複数の樽の原酒をブレンドしたもののことです。
なおシングルカスクは蒸留所のひとつの樽だけの原酒を詰めたもののこととなります。カスクには樽という意味があるのです。
モルト、シングルモルトの他に、ブレンデッドウイスキーとして分類されるウイスキーがあります。
ブレンデッドウイスキーは前述のブレンデッドモルトウイスキーとは異なるものです。
モルトウイスキーとグレーンウイスキーをブレンドしたものがブレンデッドウイスキーと名付けられています。
単独と混合、味や製造方法の違いは?
シングルカスク、シングルモルト、モルト、ブレンデッドは大麦を材料としたウイスキーという点では共通していますが、ブレンドの仕方によって、名称が異なっています。なぜこのようにさまざまな製法が生まれたのでしょうか? その答えはいくつか考えられます。
ひとつはお酒の好みが人それぞれ違うあること、もうひとつはウイスキー供給量の変化への対応です。
シングルカスク、つまり蒸留所のひとつの樽だけで造ったウイスキーはとても個性の強い味になります。
たったひとつの樽だけの味なので、ピュアであり、希少価値もありますが、量もひと樽分のみとなり、きわめて少量になるのです。
シングルモルトも同じ蒸留所で製造されているため、個性的な味になります。
ただしシングルカスクと違って、複数の樽をブレンドするので、ひと樽ひと樽の個性を活かしながらもバランスの取れた味となるのです。
蒸留所の規模にもよりますが、こちらも大量生産というわけにはいきません。
モルトウイスキーは異なる蒸留所のウイスキーを混ぜあわせるので、蒸留所の個性を残しながらも、異なる個性のブレンドの妙を楽しむことができます。
いろいろな組み合わせが考えられ、製造量の調節も可能。
もっとも大量生産に向いているのがブレンデッドウイスキーです。
モルトウイスキーとグレーンウイスキーをブレンドすることによって、飲みやすいウイスキーが完成します。
樽や蒸留所の個性は薄れますが、安定した均一の味での大量生産が可能になるのです。
現在、世界で流通しているウイスキーの9割以上がブレンデッドウイスキーとなっています。
ウイスキー好きならば、モルト、シングルモルト、シングルカスクと、遡って飲んでいくのもいいでしょう。
ウイスキー初心者には飲みやすくてリーズナブルなブレンデッドウイスキーがおすすめです。
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定義の異なる世界5大ウイスキーの原料とは
ここまで原料を中心としてウイスキーについて解説してきました。整理する意味も兼ねて、5大ウイスキー別に原料を確認しておきましょう。
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スコッチウイスキー
スコットランドで生産されるスコッチウイスキーは、モルトウイスキー、グレーンウイスキー、ブレンデッドウイスキーを製造しています。特徴はピート(泥炭)香。独特なスモーキーさと、モルトとグレーンの絶妙なバランスを味わうことができます。
アイリッシュウイスキー
アイルランドで生産されるアイリッシュウイスキー。モルト、グレーン、ブレンデッドの他に、アイリッシュウイスキー独自の、未発芽の大麦を使用したポットスチルウイスキーを製造しています。
クセが少なく、まろやかな口当たりが特徴であり、穀物本来の豊かさを感じられます。
ジャパニーズウイスキー
スコッチウイスキーを手本としてきたジャパニーズウイスキーは、スコッチと同じくモルト、グレーン、ブレンデッドに分類されます。他国に比べて歴史は浅いものの、日本人好みに合わせ発展を遂げ、スコッチよりも口当たりが軽く繊細な味わいになっています。
アメリカンウイスキー
生産されている種類が多いことが特徴のアメリカンウイスキー。トウモロコシを原料としたバーボンをはじめ、コーン、ライ、ホイート、テネシーウイスキーなどがつくられています。
中でもトウモロコシを原料としたものが多く、甘さや樽香の強さを味わえるウイスキーです。
カナディアンウイスキー
カナダで生産されているカナディアンウイスキー。トウモロコシなどが原料のベースウイスキーと、大麦などの麦類を原料としたフレーバリングウイスキーがつくられています。
多くがこれらのブレンデッドウイスキーです。
香味づけにウイスキー以外のお酒を添加してもいいという独自のルールが、他国のウイスキーの味わいとの決定的な違いです。
ウイスキーの原料としての仕込み水
ウイスキーの原料として忘れてならないのは水でしょう。
水はウイスキーのおいしさを大きく左右する重要な要素なのです。どんな水がいいのか、解説していきましょう。
ウイスキー造りに欠かせない水
ウイスキーの製造に使われる水は仕込み水と呼ばれています。ウイスキー造りにおいては、この仕込み水が大量に使用されるため、ほとんどの場合、ウイスキーの醸造所の近くには良い水源があるのです。
良い仕込み水の条件は飲んだときにおいしいということだけではありません。
モルトを発酵させる際に酵母の活動が活発になるように、ミネラルがバランスよく含まれている必要があるのです。
日本のウイスキー造りの歴史をみると、良い水源がある場所を探して、その近くに醸造所を建てるところからスタートしていることがわかります。
日本初の蒸溜所、山崎蒸溜所のある大阪府三島郡は千利休が茶室を開いたほど水質の良い地域として有名です。
山梨県の白州蒸溜所の近くには日本の名水100選に選ばれた尾白川が流れています。
おいしいウイスキーのあるところに名水あり。
水の質によって、香りや口当たりの良さも変わってくるので、いかに良い水源を見つけるかが重要なポイントになるのです。
硬水と軟水の違い
水は硬水と軟水に分類されます。一般的にジャパニーズウイスキーやスコッチはミネラル分が少ない軟水が多く使われ、アメリカンウイスキーやカナディアンウイスキーは硬水が多く使われる傾向があるのです。
ミネラルが多く含まれているほうがいいという説もありますが、マグネシウムは酵母の働きを抑制する作用があるので、一概にはいえません。
硬水か軟水かよりも、いかにミネラル成分がバランス良く混ざっているかが重要ということでしょう。
ジャパニーズウイスキーが世界的に評価されるようになった背景には日本の名水があるのです。
ウイスキーのおすすめの飲み方
ウイスキーの飲み方は、定番のものから通なものまで、気分によって変えられるほど多くの種類があります。おしゃれなカクテルやアレンジなどもおすすめですが、ここでは初めてのウイスキーでも楽しめる定番の飲み方をご紹介します。
ストレートで味わう
ウイスキー本来の繊細な味わいを堪能できるのが、ストレートです。アルコール度数が高いことからハードルが高い飲み方と思われがちですが、熟成による複雑な味わいや香りをじっくり楽しむことができる飲み方です。
さまざまなウイスキーとの飲み比べもおすすめです。
最初の一杯だけでも、ウイスキーそのものを味わってみてはいかがでしょうか。もちろん、チェイサーも忘れずに。
オン・ザ・ロックで味わう
オン・ザ・ロックは、グラスに大きな氷を入れた状態で、ウイスキーを楽しむ飲み方です。ウイスキーを冷えた状態で味わうことができ、ひとくち飲む度に”カラン”という氷の音が、大人な雰囲気で魅力的です。
美味しく味わうポイントは、グラスも冷やしておくこと。
氷が溶けやすいとウイスキーが薄まってしまうため、冷えたグラスに大きめの氷ひとつが理想的です。
ハイボールで味わう
近年大人気のハイボールは、ウイスキーを炭酸で割ったもの。たっぷりの氷でキンキンに冷えた状態で飲むことがおすすめで、爽快感がたまらない一杯です。
食事と合わせやすいことも人気の理由のひとつで、レモンやミントなどでアレンジしやすいところも魅力です。
高級感の強かったウイスキーを、飲みやすく親しみやすい印象に変えてくれたのもハイボールですね。
炭酸が弱くならないように、かきまぜすぎないことが美味しく飲むポイントです。
トワイスアップで味わう
通な飲み方で知られているトワイスアップ。ウイスキーと常温の水を1:1で、氷を入れずに注ぎます。
ストレートが難しい方にもおすすめで、ウイスキーの香りを引き立ててくれる飲み方です。
ウイスキーの香りを一番感じられるアルコール度数は20~30%とされているため、約40%のウイスキーはこの割合が最適です。
さまざまなウイスキーの香りの違いを楽しみたい方は、ぜひトワイスアップで比べてみて下さい。
飲まないウイスキーは買取もおすすめ
種類が豊富なウイスキーは、お手頃な商品から高価な銘柄までさまざまです。希少価値が高いウイスキーであれば、買取に出すこともおすすめです。
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まとめ
ウイスキーを原料という視点から見ることによって、ウイスキーが風土と密接な関わりのあるお酒であることがわかります。
そして、ウイスキーがおいしいお酒をつくろうとする人々の情熱の成果であることも実感できるでしょう。
原料によって味わいや香りが異なる楽しさも、それぞれの国の特徴や歴史を知った上で飲むと、またひとつ楽しみ方の変化があるかもしれません。
グラスの中で光り輝く琥珀色の液体は多くの人々のたゆまぬ努力の結晶でもあるのです。