スコッチウイスキーの吟遊詩人、ロバート・バーンズ。その①
今回の豆知識のテーマは、『スコッチウイスキーの吟遊詩人、ロバート・バーンズ』です。
日本での知名度は低いですが、蛍の光の原詩『オールド・ラング・サイン』の作詞者だよ、といえば、親しみを感じてもらえるでしょうか。
オールド・ラング・サインはなんと、「人類の誕生以来、世界中で2番目にもっともよく歌われてきた歌」なのです。(ちなみに、1番はHappy Birthday to You)
さらに有力日曜紙「Scotland on Sunday」によると、バーンズは
「スコットランドが輩出した最も優れた人物10人のトップ」に上げられているほどです。
(2位以下は、ペニシリンの発明者フレミング、建国の英雄ウィリアム・ウォレスとロバート・ブルース、ジェームス6世、アダム・スミス、アフリカ探検のリビングストン、哲学者デビッド・ヒューム、文学のウォルター・スコット、鉄鋼王カーネギー)
近年バーンズの人気は、スコットランドに限らず世界的な広がりを見せていますが、これは彼の詩の魅力、思想、人間性、生き様が国境を超えて人々の共感を得ているからです。
バーンズの人生はスコッチウイスキーと切っても切れない関係があります。
今回はバーンズの短い生涯とウイスキーにちなんだ話、彼の魅力をニ回に分けて触れていきたいと思います。
スコットランドの息子、ロバート・バーンズ
ロバート・バーンズ Robert Burns (1759-1796) は、スコットランドの民族の誇りといわれる詩人です。今でもスコットランド人にとって、単に「吟遊詩人(The Bard )」といえばバーンズをさしているくらい、彼らの生活の中にバーンズは溶け込んでいます。
バーンズの誕生日には、スコットランドではもちろん、世界中に散らばったスコットランド人が、バーンズ・サパーと呼ばれる料理(腸詰の一種)を食べ、オールド・ラング・サインを歌います。
建国記念日に準じた扱いを受けているのです。
彼がこんなに賞賛されているのは、詩人としての魅力だけでなく、伝統と誇りのあるスコッッチに対する愛情の深さからなのです。
バーンズのウイスキーへの思いの雄叫び
1784年のもろみ法の導入で、ローランドの正式免許下でのウイスキーの生産は急増しましたが、これらはそのまま飲まれるのではなく、ほとんどがロンドンへ輸出されてジンに再蒸溜されていました。スコットランドからのスピリッツの輸入急増に危機感をいだいたロンドンの蒸溜業者は政府に働きかけ、1786年に法律は再度改正されます。
もろみ容量による課税を廃止し、全スコットランドで蒸溜釜の容量に課税、スコットランドからイングランドへの輸出には厳しい関税と制限を課したのです。
このあおりで、スコットランドの多くの蒸溜所が倒産してしまいました。
これに対してバーンズは、スコットランド出身の国会議員へ、祖国スコットランドの為に立ち上がるよう詩を使って嘆願します。
嘆願といっても、
「The Author's Earnest Cry and Prayer(筆者からの心からの陳情と哀願)」は32節からなる詩で、第1節こそ“議会で思慮深く働いておられる議員諸侯に、素朴な詩人からのお願いを慎んで差し上げます"となっていますが、後は現在の法律が不合理で、不正が横行してスコットランドが困難に直面していると述べ、傍観しないでしっかり対応して欲しい、と叱咤激励している内容なのです。
詩の最後、「Freedom and Whisky gang thegether, Tak off your dram! (“自由とウイスキーは共に進む、諸君杯を上げよう!")」は、バーンズのウイスキーへの思いを凝縮した雄叫びといえます。
ウイスキーの詩を読む
●「大麦太郎」John Barleycorn死刑になった大麦は土に埋められ死を宣告されたが、春になって芽を吹き、夏の太陽で生育し、秋には実を実らせる。
刈り取られた大麦は、水攻めののち床に投げられ、乾燥塔では火あぶり、石臼で粉々にされ、あげくのはてに中味を抜き取られて皆で飲まれてしまうが、ここで人々は大麦を英雄だと知る。
飲むほどに『大麦太郎』は人々の勇気と喜びを高め、苦悩を忘れさせ、涙している未亡人の心にも歌をもたらす。
さあ、皆でJohn Barleycornに乾杯しよう。
このスコットランドで大麦の子孫がずっと繁栄することを願って…。
寒冷なスコットランドでワインは出来ず、伝統的なエールも、それを蒸溜したウイスキーも大麦の酒です。
バーンズは相当な酒飲み(酒を愛していた)で、この詩では大麦を人に擬し、大麦を称えています。
●「ライ麦畑を突き抜けて」 Comin Thro' The Rye
ジェニーはずぶぬれ 乾かない コートを引きずり やってきた
ライ麦畑を 突き抜けて コートを引きずり やってきた
女が男と 出会ったら 抱きしめられても 怖がりません
女が男と 出会ったら どんなことが おこるでしょう
女が男と 出会ったら 二人だけの お楽しみ
バーンズの有名なフォークソングで、内容は、ライ麦畑を舞台に若い男女の出会いを描いたものです。
日本語では「ライ麦畑で出会ったら」と訳されることが多いです。
日本ではメロディだけが一人歩きして、「故郷の空」として歌われています。
まとめ
いかがでしょうか。あなたもバーンズの魅力に惹かれてきていませんか。次回は、彼がいったいどんな生涯だったものか、その深い真実に触れていきたいと思います!
その②はこちら